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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
窓を見上げて暫く立っていても、秀ちゃんも吉ちゃんも顔を見せぬので、私はいつもの合図の口笛を吹いた。すると、黒い窓の鉄格子の所へ、ヒョイと一つの顔が現われたが、私はそれを見て、ハッとして、自分の頭がどうかしたのではないかと疑った。何ぜと云って、そこに現われた顔は、秀ちゃんのでも吉ちゃんのでもなくて、父親の部屋にいるとばかり思っていた、諸戸道雄の引き歪んだ顔であったからだ。
何度見直しても、私の幻ではなかった。まぎれもない道雄が、双生児の檻に同居しているのだ。それが分った刹那、私は思わず大声に叫び相になったのを、素早く諸戸が口に指を当てて注意してくれたので、やっと食い止めることが出来た。
私の驚き顔を見て、諸戸は狭い窓の中から、しきりと手真似で何か話すのだが、秀ちゃんの微妙な目とは違って、それに話す事柄が複雑過ぎるものだから、どうも意味が取れぬ。諸戸はもどかしがって、一寸待てという合図をして首を引込めたが、やがて、丸めた紙切れを私の方へ投げてよこした。
拾い上げて拡げて見ると、多分秀ちゃんのを借りたのであろう、鉛筆の走り書きで、次の様に認めてあった。