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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

こんな泣言を並べるのがこの書物の目的ではなかったのだ。読者よ、どうか私の愚痴を許して下さい。

K氏と、私とは、その現場でも、また後日役所に呼び出されさえして、色々と初代の日常に関して取調べを受けたのであるが、それによって得た知識、又初代の母親や近所の人達から聞知った所などを綜合すると、この悲むべき殺人事件の経過は、大体次の様なものであった。

初代の母親は、その前夜、やっぱり娘の縁談のことについて相談する為に、品川の方にいる彼女の亡夫の弟の所へ出向いて、遠方の事故、帰宅したのはもう一時を過ぎていた。戸締りをして、起きて来た娘と暫く話をして、彼女の寝室に定めてある方の、玄関ともいうべき四畳半へ臥った。ここで一寸、この家の間取を説明して置くと、今云った玄関の四畳半の奥に六畳の茶の間があり、それが横に長い六畳で、そこから奥の間の六畳と三畳の台所と両方へ行ける様になっている。奥の間の六畳というのは、客座敷と初代の居間との兼用になっていて、初代は勤めに出て家計を助けているので、主人格として一番上等の部屋を当てがわれていたのである。玄関の四畳半は、南に面していて、冬は日当りがよく、夏は涼しく、明るくて気持がよいというので、母親が居間の様にして、そこで針仕事などすることになっていた。