轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
「そのあとで買いに来た客は、三十位で、色が白くて、髭がなく、右の頬に一寸目立つ黒子のある人ではなかったですか」
「そうそう、その通りの方でしたよ。優しい上品なお方でした」
果してそうであった。諸戸道雄に相違ないのだ。その人なら隣の木崎の家へ二三度来た筈だが、気附かなんだかと尋ねると、丁度そこへ出て来た老人の細君が、加勢をして、それに答えてくれた。
「そう云えば、あのお人ですわ。お爺さん」幸なことには彼女も亦、老主人に劣らぬ饒舌家であった。
「二三日前に、ホラ、黒いフロックを着て、お隣へいらっした立派な方。あれがそうでしたわ」
彼女はモーニングとフロックコートとを取違えていたけれど、もう疑う所はなかった。私は尚念の為に、彼が傭ったという人力車の宿を聞いて、尋ねて見たところ、送り先が、諸戸の住居のある池袋であったことも分った。
それは余りに突飛な想像であったかも知れない。だが、諸戸の様な、謂わば変質者を、常軌で律することは出来ぬのだ。彼は異性に恋し得ない男ではなかったか。彼は同性の愛の為に、その恋人を奪おうと企てた疑いさえあるではないか。あの突然の求婚運動がどんなに烈しいものであったか。