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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
だが、正午までに書留小包にして貴様が自分で郵便局へ持って行かぬと、間に合わぬよ。どちらでも好きな方を選べ。警察に云ったとて駄目だよ。証拠を残す様なへまはしない俺だ。
「つまらない冗談をするじゃありませんか。郵便で来たんですか」
私は何気なく尋ねた。
「いや、昨夜、窓から放り込んであったんだよ。冗談じゃないかも知れない」
深山木は案外真面目な調子で云った。彼は本当に恐怖を感じているらしく、ひどく青ざめていた。
「だって、こんな子供のいたずらみたいなもの、馬鹿馬鹿しいですよ。それに正午限り命をとるなんて、まるで活動写真みたいじゃありませんか」
「いや、君は知らないのだよ。俺はね、恐ろしいものを見てしまったんだ。俺の想像がすっかり適中してね。悪人の本拠を確めることは出来たんだけれど、その代り変なものを見たんだ。それがいけなかった。俺は意気地がなくて、逃出してしまった。君はまるで何も知らないのだよ」
「いや、僕だって、少し分ったことがありますよ。七宝の花瓶ね。何を意味するのだか分らないけれど、あれをね諸戸道雄が買って行ったんです」
「諸戸が? 変だね」
深山木は、併し、それには一向気乗りのせぬ様子だった。