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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
奥様は歌が好で、今でもちょいちょい、加茂川ン許へお通いだから、梅岡さんに、――私も歌が習いたい、紅葉の盛り、上野をおひろいのおともをしながら、お師匠さんへ、奥様から、御紹介せ下さいまし。とこういって貰いましょう。
好な道だから、二ツ返事で。その日に限って、おひろいかなんか。梅岡さんが、その上野をおともという間に、いい加減に日を暮らして、夜になって、くらやみ坂へ連れ行かせるから、そうしたら、白薔薇の薫をあてに。)
その相談の出来たのは、お夏さんが三年ぶりで愛吉に逢った夜で。余所ゆきを着ていた上衣だけ脱いで、そのまま寝床へ入った、緋の紋綸子の長襦袢のまま、手を伸ばして、……こりゃ先生だと、雪の腕、という処だ。
手近な床の上の、鏡台の抽斗から、その壜を出して、まだ封も切ってなかったそうで。これはね、ちょうどその日行合わせた山の井さんの土産でしたと。
くちが堅く入っていたのを、ト取ろうとすると、占っていたので、高島田にさした平打を抜いて、蓮葉に、はらんばいになったが、絹蒲団にもつかえたか、動きが悪いから、するりと起き上って、こう膝を立てていましたッてね。