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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
妙なことがあるもんで、ここで何も俗にいう死神が取着いたというわけではないから、私のような筵破りは除外例、その死神がお夏さんを誘うためにしばらく人を払ったというのじゃがあせん。私の口でいっちゃ似合いませんが、死を決すれば如神で、名僧のごとく、知識のごとく、哲人のごとし。女とてかわりはない、おのずから浮世の塵を払って、この仙境にしばらくなごりを惜んだのでありましょう。
その時はそうとも思わず、ははあ、こりゃやはり自分たちと同様風説ばかりで、一体、実際縦覧をさせるか、させぬか、そこどころちとあやふやな華族の庭。こりゃ、遠慮をして見合せていた処へ、二人。お夏さんはともかく、私というのまでその中から顕われたのを見て、卯之吉の庭に居た連中、気を揃えて推参に及んだな。
どうだ善知識だろうと、天窓はこれなり、大手を振って通り抜けた――愚にもつかぬ。
あれから、今の真宗大学を右に見て、青柳町へ伸して、はて、どこらだろうと思う、横町の角に、生垣の中が菊の盛。そこに立ってただ一人視めていた婆さんがあった、その顔を見ると、塞ったようになった細い目で、おや! といった。」