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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
」
「へい、何てって来やがったんで。」
「ええ、御免下さいまし、こちら様のお嬢様はお内ですかッていったがね。」
若い衆、板の間に手をかけて、分別ありそうに、傾いた。白いのを着た姿は、前門の虎に対して、荒神様の御前立かと頼母しく見えたので。
「いったんだがね、もっともお留守だからお留守だといったら、じゃまた後ほどッて帰ったがね。」
いいいい、くるりと身をかえして立つと、踞んでいた腰を伸ばし切らず、直ぐそこに、てらてらの長火鉢。
「誰方でございますえッて聞いたら、何にもいわないで、への字形の口で、へへへへはちと気障だったよ、あああ。」
と傍の茶棚の上へ、出来て来たのを仰向いてのせた、立膝で、煙草盆を引寄せると、引立てるように鉄瓶をおろして、ちょいと触ってみて、埋けてあった火を一挟み。
番煙草と見ゆるのに、長煙管を添えて小取廻しに板の間へ押出した。
「まあ、一服おあがんなさい。」
さほど思案に暮れるほどの事でもないが、この間待って黙って控えた。奴、鼠のように亀甲羅宇を引いて取り、
「おかみさん、頂きます。」
「まずいよ、私ンだから。」
「どういたしまして、へい、後にまた来ますッて。