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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

またきっと、心臓というものはどこにあるの、なぜ御飯が肺の方へ行かないで済むの、誰の目も綺麗なのは、水晶と同じ事か、なぞとね、番ごと聞く。第一顔を見ると直ぐに清書を持出して、お目にかける。

(いや、まずいこと、私の医者のようだ、)と串戯にいうのを真にうけては、せっせと双紙に手習をするんだそうで。

そうかと思うと、時にゃがらりと巫山戯出して、肩へつかまる、羽織の紐を引断る、膝を打つ、擽る。車夫でも待っていないと、帰りがけに門口からドンと突飛ばす、もっともそんな日は、医学士の姿を見ると、いきなり飛出して框から手を引いて、すぐそのまんまで二階へ上ろうとするから、狭い階子段、で行詰ってどちらへも片附かずに、揉む。

しなだれるんじゃない、媚びるんじゃない、甘えるの。派手なんじゃない、騒々しいので、恋も情もまだ知らない、素の小児かと思うと、帰ったあとを、二階から見送って、そのまま消えそうに立っている。

そこで附添いが引手茶屋の婆さんだから、ちとその、そこン処をな。

何して、いい工合に、と独りで気を揉んだそうですが、さて口へ出そうとすると、何となく、気高い、神々しい処があって、戦場往来の古兵が、却って、武者ぶるいで一言も出んのだそうで。