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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
まあまあ、不思議な縁というのであろう。とても人間業で行くのじゃない。その内に、出雲でも見るに見かねて、ということになるだろう、と断念めながらも、医学士に向って、すねてツンとする時と、烈しく巫山戯て騒ぐ時には番ごと驚かされながら、ツンとしても美人の娼妓のようでなく、騒いでも、売れる芸者のようでなく、品が崩れず、愛が失せないのには舌を巻いていた処、いやまた愛吉が来た晩は、つくづく目覚しいものだったと言います。……」
それはこうである。愛吉は、長火鉢の前でただ旨そうに飲んでいたが、心もって嬉しそうな顔に見えなかつたのを、酌をしながらお賤も不思議に思った。蓋し生れつき面が狼に似たばかりでない。腹に暗き鬼を生ずとしてある疑心の蟠があったのも、お夏を一目見たばかりで、霧の散ったように、我ながらに掴え処もなくて済んだその時、今そこに婆さんの顔ばかりとなったのみならず、二杯三杯と重るにつれて、遠慮も次第になくなる処へ、狂水のまわるのが、血の燃ゆるがごとき壮佼、まして渾名を火の玉のほてりに蒸されて、むらむらと固る雲、額のあたりが暗くなった。
「ウイ、」
と押つけるように猪口を措いて、