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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

」

「お夏さん、」

「あい、そうさ。」

「や! 串戯じゃねえ、まったくですかい。」

「ほんとにも何にも、」

「あの、屑屋いって。踊にゃないね、問屋でも芝居でもなけりゃ、それじゃ、外にゃねえ、屑い、屑いッて、籠を担いだ、あれなんで?」

「ああ、そうともお前、私がお目にかかった時なんざ、そりゃおいとしかったよ。霜月だというのに、汚れた中形の浴衣を下へ召して、襦袢にも蹴出しにもそればかり。縞も分らないような袷のね、肩にも腰にもさらさの布でしき当のある裾を、お端折でさ、足袋は穿いておいでなすったが、汚いことッたら、草履さ、今思い出しても何ですよ、おいとしいッたらないんですよ。」

「おかみさん、逢ったのか、」

「そうですよ、」

「串戯じゃねえ、どこでだね。」

「氷川の坂ン処ですよ、」

「いつ?」

「一昨年の霜月だってば。」

「串戯じゃねえ、ちょいと知らしてくれりゃ可いんだ、」

と膳の下へ突込むように摺り寄った。膝をばたばたとやって、歯を噛んで戦いたが、寒いのではない、脱いだ膚には気も着かず。太息を吐いて、

「ああ、それだ。芥溜ッていったなあそれだ、串戯じゃねえ、」

「それにお前、寒い月夜のことだった。