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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
芸妓や娼妓でも囲いあがりゃ、いざこざはちっともねえが、汝が病家さきの嬢さんの落目をひろッて、掻きあげにしやあがったは、何のこたあねえ、歌を教えて手を握る、根岸の鴨川同断だ。江戸ッ児の面汚し、さあ、合点が出来ねえぞ、)とぐるぐると廻って突立つから、慌てて留める婆さんを、刎ね飛ばす、銚子が転がる、膳が倒れる、どたばた、がたぴしという騒ぎ、お嬢さん、と呼んで取さえてもらおうとしても、返事もなけりゃ、寂閑はどういうわけ?……
(もう寐やがったか、太え奴だ。)
とドンと襖へ打附かって、眼の稲妻、雷の声、からからからと黒煙を捲いて上る。ト、これじゃおもりが悪いようで、婆さん申訳がありますまい。
あとから夢中で駆け上った、この時でさ、――先生。
二人とも驚いたのは。
二階の二人が、クスクス笑っていたというんですものな。
気の抜けること夥しい。
ちんちんをするような形で、棒を呑んでしゃっきりと立った、愛吉の前へ小さな紫檀の食卓の上から、衝と手を伸ばして、
(親方、申上げよう、)
といって猪口をさして、山の井さんが、呵々と笑ったとお思いなさい。」
光起は藍と紺、味噌漉縞一楽の袷羽織、おなじ一楽の鼠と紺を、微塵織の一ツ小袖、ゆき短にきりりと着て、茶の献上博多の帯、黄金ぶちの眼鏡を、ぽつりと太い眉の下、鼻隆く、髭濃かに、頬へかけ