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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

が、鬢の梅の雫ではない、まつげのそよぎに、つらぬきとめぬ露であった。――

(私は一向、そんな方はぞんざいだったが、この勝山さん娶おうとした時、親類が悪い風説を聞いたとか言って、愚図々々面倒だから、今の、山河内のを入れたんだが、身分が反対だとよかった。女世帯の絵草紙屋を棄てて、華族の女を媽にしたというので、酷くこの深川ッ児に軽蔑されるよ。はははは、)

と恐縮をしたように打笑い、

(どうだ親方、ちっと粋なのを世話しないか。)

と上り口で振返って、爽に階下へおりた。すぐ上って来るだろうと思うと、やがて格子戸が開いたのは、懐手で出て帰ったのである。

転寝はかぜを引くと、二階へ床を取りに行った時、女房は、石のように固くなって愛吉が膝を揃えて畏っていたのを見た。月の夜の玉川に、砧を枕にした風情、お夏は愛吉のその膝に、なおすやすやと眠っていた。

密と起して、先生がおっしゃった、愛吉さんもお泊り、という時、お夏はぱっちり目を開けたが、極めて鷹揚に無雑作に、

(…………)

枕の異ったことは何にもいわず、

(お前もお手つだい、)

と愛吉に教えて、自分も枕など持ち出して、急いで寝床が出来ると、(このまま寝ようや、)と云ったのが、その緋の紋綸子の長襦袢。