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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
同時にそれまで、青葉の歌の声を留めて、その二人の密話を傍聞きして取り巻いた、同じ白衣の看護婦三人。宿直の姿が二階を放れて、段に沈むと、すらすらと三方へ、三条の白布を引いて立ち別れた。その集っている間、手に、裾に、胸に、白浪の飜るようだった、この繃帯は、欄干に本を留めて、末の方から次第に巻いて寄るのである。
渠等も、お夏のこの容体を今聞いた、無意識にうたいつるる唱歌の声の、その身その身も我知らず、
身の行末をつくづくと、偲ぶ鎧の袖の上に、
散るは涙か、はた露か、
より低く、より悲しげに、よりあわれに、より多く頭を垂れて、少しずつ、巻き込みながら繰り寄る繃帯。
遠く廊下に操る布の、すらすら乱れて、さまよえるは、ここに絶えんず玉の緒の幻の糸に似たらずや。繋げよ、玉の緒。勿断ちそ細布。
遠山と丹平は、長き廊下の遠き方に、電燈の澄める影に、月夜に霞の漾うなかに、その三人の白衣の乙女。あわれ、魂を迎うべく、天使来る矣、と憂えたのである。
雨は篠突くばかりとなった。棟に覆す滝の音に、青葉の唱歌の途切るる時、ハッと皆、ここにあるもの八九人、一時に呼吸を返したように、お夏の、我に返る気勢を感じた。