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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
いきなり、手をのばすと、その新造の胸倉を打掴えて、ぐいと引摺り込みながら硝子戸を片手でぴッしゃり。持っていた洋燈の火屋が、パチン微塵、真暗になったから、様子を見ていた裏長屋のかみさんが、何ですぜ、殺すのか、取って食うのか、生血を吸うのかと思ったっていうんですぜ。
やがて何ですとさ、火の玉の野郎が台所口から廻って、のそのそ戸外へ出て行くから、密とそのあとを覗くと、新造がね、薄暗い中にぼんやり幽霊のように坐っていましたッて。
愛の奴はどこへ行ったろうと思うと、お定りのにごり屋。
(おう、媽々が出来たから、今日は内で飯を喰うんだ、道具を貸してくんねえ、)
とまず七輪を一ツ運んだでさ。あとで鍋に醤油を入れてもらって、茶碗を二ツ、箸二人前。もう一ツ借込んだ皿にね、帰りがけにそれでも一軒隣の餅菓子屋で、鹿の子と大福を五銭が処買ったんですって、鬼の涙で、こりゃ新造へ御馳走をしたんですとさ。
そら、食いねえは可いが、燈は点けたそうですけれど、火屋なしの裸火。むんむと瓦斯のあがるやつを、店から引摺って来た、毛だらけの椅子の上へ。達引かれたむき身をじわじわ、とやって、