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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
」
「いいえ、路順が悪かったから、今日は止したの。
深川からじゃ大廻りでね、内の前を二度通るようなもんですもの、出直しましょうと思って。
でも車だから、かえりはぶらぶら歩行にして、行って見ようかと思ったんですがね、お茶の水辺まで来ると、何だか頻に気が急いてね、急いで急いでッていうもんだから、車夫が慌ててさ。壱岐殿坂だッたかしら、ちっとこっちへ来る坂下の処で、荷車に一度。ついこの先で牛車に一度、打附りそうにしたの。虫が知らせたんだわね、愛吉、お前のお庇で、」
と入ったまま長火鉢に軽く膝を支いて、向うへ廻った女房に話しかけたが、この時門口を見返ると、火の玉はまだ入らず、一件の繻子張を引提げながら、横町の土六尺、同一処をのそりのそり。
「お入りなね、何をしてるの、愛吉、お入ンな、さあ、」
「お前さんお入ンなさいましとさ。」
女房のこのとさがちと木戸になった。愛吉入りそびれて、またのそり。
「あら、剣舞をしてるわ、ちょいと、田舎ものが宿を取りはぐしたようで、見っともないよ、私の情人の癖にさ。」
引手茶屋の女房の耳にも、これは破天荒なことをいって、罪のない笑顔を俯向け、徒らに衝と火箸で灰へ、言を消した霞に月。