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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
見ると、――柳屋のだろうじゃがあせんか。面と向ってついぞ言を交わしたということもないのですが、先生、貴下も御同然に、こりゃ社用外のさがしもので、しばらく行方が知れないのを、酷く心配をいたしておりましたで、思わず膝を拍って私。
(お夏さん。)と申しました。……
思いがけない様子でした。こりゃ理だ。実は私の方が思いがけないんで。お顔を覚えておりません。誰方、という挨拶で、ちと照れましたがな。以前、人形町辺に居りました時分ちょいちょいお店へ参って、といってこの天窓に対して、(肖顔画などを孫どもに買ってやりましたで存じております、)などと遣ったですて。
まず、これへ、と人様のものでお愛想。自分も拝借をしておりましたし、まだ二ばかり据えてありました陶器ものの床几を進めると、悪く辞退もしないで静に腰をかけたんですが、もみじの中にその姿で、いかにも品が佳い。これでさげ髪だと何の事はない、もみじ狩の前シテという処ですが、島田の姉さんだから、女大名。
私は太郎冠者というやつ、腰に瓢があれば一さし御舞い候え、といいたい処でがしたが、例の下卑蔵。殊に当日はあすこを心掛けて参ったので、煙草は喫まず、その癖、樹下石上は思いも寄らん大俗で、ただ見物も退屈、とあらかじめ、紙に捻って月の最中というのを心得ていましたから、(ちとお歌でも