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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
)
こういいいい体温器を入れられた時は、私は思わず、人事ながら悚然とした、お庇で五分その時は熱が上ったですよ。」
丹平も呆気な顔して、
「酷うがすな。」
「酷いんですとも! でもまあ、氷嚢を七ツと聞いて、疾に対してほとんど八陣の備だ。いかに何でも、と思ったが不可ない。
日の暮方に、また、夕河岸の鰹、生鰹、鰯こ、鰯こい――伊太利じゃ晩餐の朗々朗が聞えて、庭のコスモス、垣根の黄薔薇、温室の朝顔も一際色が冴えようという時、廊下が暗くなると、
(あ、熱々々々、)と火がついたように、凡ての音楽を打消して、けたたましく言い出したじゃないか。
どうです、それがお夏さんだ。
余り何だから、私は廊下へ出て、二三間、そっちの方へ行って見ました。薄暗い扉に紙を貼って、昨日の日づけで、診療の都合により面会を謝絶いたし候――医局、とぴたりと貼ってある。いよいよ穏でない。
それまで見たが、名札を見ようという気もなし、扉はその字が読めるようにこっちへ半ば開けてあったんですが、向うには、附添と見えて、薄汚い、そういっちゃ悪いが、それこそ穴だらけの袷を素膚に着た、風体のよくない若い男が、影のように立っていました。