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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

ぞ、や、なり、かなかな、侍る、なんど、手爾波を合わされて助りますかい。……あとで竹永さん、貴下が探りましたね、第一、愛吉が知っていたんだね。……

お夏さんは人知れず、あの気象には珍らしい、豪家が退転をするというほどの火事の中でも、両親で子の大事がる雛だけ助けたほど我ままをさした娘に、いい遺した遺言とかで、不思議に手習をする、清書草紙に、人知れず、医学士(山の井光起)の名を書いて、惚れ抜いていたんだそうですな。

何と、その恋人を、しかも自分が、師匠のいいつけで煽がせられて、口惜しがって泣いた、華族の娘に取られようとは、どうです。

一人は医学士の意中を計った親類の周旋。一方はその母親から持込んだ華族の縁談。

山河内定子は、今現に、山の井医学士の令夫人だ。竹永さん。

私は蔭ながら、大なる責任者だ。

私が愛吉ならきっと行る、愛吉ならずとも、こりゃきっと行らねばならん処だ。定子を殺さねばならないわけだ。確だ。

が、幸か、不幸か、二三冊読んでいるから、まさかに剃刀を逆手に取って、可愛い娘のために、その恋の敵を、暗殺しようとは思わなかった。

しかし文字のあるものが、目に一丁字のない床屋の若いものに、智慧をつけて、嵩じたいたずらをしたのが害になったんだから、なお責任は重大です。