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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
と大きな懐中物で、四角に膨れた胸を撫でつつ、
「何ともいえないので、まるで熱鉄を嚥下す心持でがすよ。はあ、それじゃ昨日、晩方にも苦しみましたな。」
「ああ、そうです、」
金之助は話の糸の、乱れた苧環巻きかえし、
「その、氷嚢をあけていた、厭な人影が中へ入る、ひとりでに扉が閉る。途端に電燈が点くかと思うと、すぐに消えた。薄暗を、矢のように、上衣なしの短衣ずぼん、ちょうど休憩をしていたと見える宿直の医師がね、大方呼びに行ったものでしょう、看護婦が附添って、廊下を駆けつけて来たのに目礼をして、私は室へ戻ったですがね。停電暫時で行燈を点けるという、いや、酷い混雑。
その内に、
(おお、熱い事、)
とその声が、一度不思議に婀娜ッぽくきこえた。何となく正気でいったように思ったが、看護婦に聞くと注射をしたんだそうで、あとは昏睡ですと。
それも二時間とは続かない、すぐにまた、
(熱々々々!)
は情ないじゃありませんか。
(熱いよ、熱い、熱いよう、)
と夢中で泣く。それはまだしもだ、竹永さん。
(熱いなあ、熱いなあ、)
なあというに至って、私は天窓からこの掻巻を引被って、下へ、下へ、とずり下って、寝床に沈んだが、なお聞える。