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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
(暑いなあ、暑いなあ、)
そこで、もぐっても、くぐっても両方の肩から水を浴びるように、ぞくぞくするから堪らなくなって、刎ね起きて、きょろきょろ見ると、その佃の帆柱が見える硝子窓の上の方が、真暗に三寸ばかり透してあったから、看護婦は、と見ると、扉を細目に開けて、白い身体をぴッたり附着けて、突当りのその病室の方を覗いてね、憂慮しそうにしているから、声をかけて閉めて貰って、
(悪いか、)
(とても、)
(気の毒だ。)
(お可哀相でなりません。)
早くしておくれ、早くさ、早くさ、とその病人のじれる声は、附添が賺しても、重い頭を掉るんでしょう。
すたすたと廊下を駆ける音。
(幾人ついているの、)
(三人です。)
(親たち?)
(いえ、こっちの看護婦と、向うから附いておいでなすった、それはそれは美しい、看護婦さんと、もう一人職人のような若い衆が、もうつきッきりで、この間ッから夜一夜一目も寐なさらないで、狂人のようですよ。)
私は愛吉とは思いも寄らない、が、先刻見た一件だ。
(何だね、それは、)
(家来衆とも見えませんが、お嬢様、お嬢様といっています。多分乳母さんの児で、乳兄弟とでもいうようなんじゃありませんか。