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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

俤橋の俤の、月夜の状に描かれたのは、その俤を写したのである。

見よ。(この第一回を。)されば、お夏の姿が、邸のもみじに入ると斉く、だぶだぶ肥った、赤ら顔の女房が、橋際の件の茶店の端へ納戸から出て来た。砂利を積んだ車がまたぐらぐらと橋を揺ったので、砂塵濛々、水も空も、日が暮れて月が冴えねば、お夏が彳んだ時のように澄みはしない。

ちと疾いが晩餐。かねてあつらえてあったから、この時看護婦が持って来たので、日はまだ鉄砲洲の帆柱の上に高い。

お夏の病室も、危く物静である。

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愛吉の咽喉を鳴らしたその夜の酒は、日が暮れてからであった。

女房は暮合いに帰って来て、間もなく、へい、お待遠、と台所へ持込んだけれども、お夏の心づけで、湯銭を持たせて、手拭を持たせて、錫の箱入の薫の高いしゃぼんも持たせて、紫のゴロの垢すりも持たせる処だった。が、奴は陰でなく面と向って、舌を出したから、それには及ばず。

ああまだそれから羽織るものを、もとより男ものは一ツもない。お夏は衣紋かけにかけてあった、不断着の翁格子のを、と笑いながらいったが、それは串戯。