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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そのときにはうんと色をつけるからな」

「テヘヘヘヘ。……ありがとうござんすといいてえが、と、いったお客に二度お目にかかったためしはねえや」

「何てえ笑い方をしやがるんだ。そうムキ出さなくても、てめえの出ッ歯は見え過ぎらあ」

「大きに悪うござんしたね。笑っているのはお客衆だ。ねえご見物、どうですえ、こんな桟敷の上席に、セセラ楊子で一杯機嫌の旦那がですよ、大きな面をしていながら、祝儀の出し惜しみに事を欠いて、人の顔の棚下ろしでゴマ化そうてえんだから恐れ入っちまうじゃありませんか、ねえ、この吝ッたれなご面相でさ」

「なに、なに、吝ッたれだと」

「いいえね、旦那。不粋な文句はよしなせえ。意気で生きてる芸人だよ。気は心だ。一文二文の投げ銭でも、贔屓とあって下さる物ならありがてえが、おまはんみたいな野暮天の袂クソなんざ、くれるといってもお断りだ。けッ、とんだ物に蹴つまずいて、すっかり場内のお客さんを白けさせてしまったい。さあ、その脚の先を引っ込めておくれ。通行の邪魔にならあ」

「だまれ、この野郎」

「おや、大きく出なすったね」

「な、なんとぬかした」

「二度いうと風邪を引かあ。