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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

それッ、法莚の奴らを追っ払って、ここの邸宅に封印をしてしまえ」

あらかじめ、そんな腹でもいたのだろう。従者、手下の無頼漢、同勢わッと土足のままで邸内へなだれ込んだ。柴進さえ防ぐいとまもないほどな瞬間だった。――すると、どうしたのか。

いちど押し入った人間どもが、ど、ど、どッと屋鳴りのうちにまた、外へ転び出して来た。どれもこれも朱に染まり、手足満足なのは一人もない。そして、それを追ッかけ追ッかけ続いて二丁斧を振りかざしながら躍り出して来た黒面の阿修羅がある。――あッと、これには殷直閣も仰天して急に、馬首を向けかえた。

だが、一喝、

「てめえだなッ」

李逵の一斧が、馬の脚を払った。また間髪を入れず、ころげ落ちた直閣の体へ、次の一閃が下っていた。噴血、ひと堪りもあろうはずがない。

あとの手輩はもう蜘蛛の子だった。――柴進は、この瞬間の出来事に、ただもう茫然のていだったが、やがて。

「李逵! きさまは、とんでもない事をしてくれたな。ああ、とり返しはつかん」

「大人。いけませんでしたか」

「知れたことを。いかなるわけあいでも、人を殺していいという法があろうか。だが今は何を言ッてみたところで始まらぬ。