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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「はははは」と、呼延灼は小手をかざして笑った。

「凌砲手。さすがだな。賊の巣は、四面が水、いまに逃げ場を失うだろう」

「いや島は広そうだ。いずれ頃合いを見て、押し渡らねば、みなごろしには出来ますまい」

「どれ、いまのうちに、兵糧でも」

言っているところへ、一角の葭の洲から、物見の兵が「――大変だっ」と、急を告げて来た。暁闇の靄のうちから、泊兵の水軍が舳艫をならべて、これへ接岸して来る模様だ――と絶叫する。

「待っていた」と、呼延灼は言った。「――どうせ、やぶれかぶれと、打って出て来たにちがいない。こっちは船手不足のところ、渡りに船だ。船を分捕れ」

水陸入り乱れての接戦は小半日に及び、大軍の壁にはばまれた賊の水軍は、またぞろ、快艇三ぞう、小舟十七、八そう、大船一隻をそこへ捨て、あと数十そうは、影をみだして、水寨の方へ逃げはじめた。

「今だ!」

と、凌振は思った。砲手の働きは、味方の掩護でしかない。自分にしろ梁山泊を実地に踏んで賊首の二ツ三ツは都の土産にしなければ軍功になるまいと逸ッたのである。

彼のこの逸り気を誘き出しに来た敵の水軍であったとは、如何せん、後で分ったことだった。