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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――とも覚らず、凌振は小舟で追ッかけ、逃げる敵の大船の中へ斬り込んだ。
これを見た呼延灼や韓滔の部下も、
「やあ、凌振にかんじんな戦功を独り占めにさせるな」
と、ばかり、水上へ乗り出し、ぐずぐずしている賊船を包囲して、われがちに乗りこんだ。しかもこの追撃に会うやいな、ぽんぽん、どの船の泊兵もみな蛙みたいに水けむりの下へ消えてしまったから、ほとんどの船上は、たちまち官兵と入れ代わりになり、そして舳艫はそのままなお梁山泊へと進んでいた。
ところが、どうしたことか。
「や、や、や?」
「船底から水が入る」
「船が沈む!」
騒ぎ立ったときはすでにどうにもならなかった。どの船も、どの船もである。いつのまにか、船底の栓が抜かれ、人間を山と盛ったまま傾き出していたものだった。
たねをあかせば、これは呉用軍師の神算鬼謀で、初めからこの一戦で勝つ気はなく、過日らい、さんざんな砲撃に悩まされた結果、
「――砲手の凌振一名をさえ失えば、敵の砲陣は空にひとしい。凌振を湖上におびき出して生け捕れ」
と、李俊、張順、張横などの、揚子江生れの水馴れた者を選んで、この策をさずけ、一挙に出てきたものだった。