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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「どうも長いご無沙汰をしちまいましたが、願がかなって、やっとこんど東京へ出て参りましたので、今日はこれをお届けにあがりましたようなわけで」

「隆さん。何だね、この黄金は」

「亡くなった親父のかたみでございますよ。臨終のせつ、父の遺言で、これは甥の寧にやってくれといわれ、長いこと預っておりましたが、つい折もなくッて」

「へえ。叔父御から私へだって。――じゃあ叔父さんは、そんなにも、死に際まで、わしを思っていてくれたのか」

「どうぞお納めくださいまし。亡父の遺言を果し、てまえもこれで荷が下りました」

「かたじけない」と、徐寧は納めて。「……久しぶりだ、ともかく一献」

と、その夕は、酒となったが、自然、色にはかくせない徐寧の浮かぬ素ぶりに、湯隆がわけを訊くと、じつは云々、先祖には申し訳ないし、自分にとっては愛児を奪われた悲しみにも勝る、かつは世間に聞えたらいい物笑い、いっそ鎗を捨てて坊主にでもなろうかと思っているところだ――という嘆息。

じっと、聞いていた湯隆は、さも同情の念にたえないように。

「……ああ、そんなわけでしたのか。そいつは飛んだご災難。てまえも小さい頃、親父に連れられてお宅へ伺ったとき、一度拝見させてもらった覚えがありますが、じゃあ、あれですね」