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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――田舎沙門とはちがい、なかなか博識で、北京の都会話もゆたかだったから、宋江と呉用とは、茶炉に茶を煮ては、よくこの和尚と、風談を興じ合っていた。
そして、ふとした話のはずみから、
「ほう? ……」と、大円が目をまろくした。
「では、おふた方とも、今日まで、河北の玉麒麟をご存じなかったのですか」
「されば、ついぞまだ」
「これは驚いた、いやあきれましたな。ほんとうの姓名は盧俊儀――それまでをいわなくても、玉麒麟といえば、河北はおろか、四百余州知らぬ者はないはずだがの」
「そんな、どえらい人物なので」
「はあ、お家は代々北京の大商人、質屋と物産を表看板にしてござらっしゃるが、当主、盧の大旦那は、そんな銅臭の人とは全く違う。学深く、武芸に長け、わけて棒を使えば、おそらく天下無双じゃろ」
よく天下天下という坊さんである。呉用は苦笑していた。宋江は知らん顔して聞いていた。――全然知らなかったわけではなく、ふと忘れていたのである。しかし、それを思い出させてくれたのは、大円の茶話のおかげだったので、あとで二人だけになると、宋江からすぐ言った。
「軍師。今日ふと、玉麒麟と聞いたら、はっと、記憶をつかれて、思わず身ぶるいが出た。