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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

運勢判断、八卦神如 見料一両

つまり遊歴の八卦見道者と化けすましたもので、宿を立ち出て、ほどなく、南大門にさしかかって見れば、さすが河北第一の大都・紫金の瓦、鼓楼の旗のぼり、万戸の人煙は、春の霞を思わせて、北方の夷狄に備える梁中書が下の常備軍も数十万と聞えるだけに、その物々しさなど、他州の城門の比ではない。

「こら、こらッ。道人、どこへ通る?」

「おう、ご番卒でございますか。てまえは、泰山の儒者ですが、諸国遊歴がてら、占を売って旅費とし、また諸山の学問を究めんとしている者でございまする」

「それはたいした秀才だな。して供の黒ンぼは」

「これは、李童と申す、唖の童僕で」

「唖か。道理で目ばかり光らせておる。旅券は持っておるか。うム、よろしい。……通れ」

呉用はほっとしながらも、わざと悠々、関内へ入って行く。たちまち、目も綾に織られるばかりな大名府の殷賑な繁華街が果てなく展かれ、ともすれば、李逵は迷子になりそうだった。「オイオイ李童。こっちだ、こっちだ」

「ほい! そッちか」

「口をきくな、唖のくせに」

「う。う……。ああくるしい」

「わしのそばを離れるなよ。ただ黙ってついて来いよ」