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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
呉用はやがて、片手の鐸鈴を振り鳴らしつつ、売卜先生がよくやる触れ口上を歌いながら、街をりんりんと流して行った。
甘羅 早や咲き
子牙は おそ咲き
彭祖 ながいき
顔回 わかじに
みんな人物 ひとかどの者
みんな一生 同じでない
かねもち びんぼう 運のつる
明日が知りたくおざらぬか
金一両は お安いもの
さあさ 神易にお問いなされ
ここに紫金大街で一番の大店舗、質、物産屋の招児も古い盧家の内では、折しも盧の大旦那――綽名玉麒麟が――番頭丁稚をさしずしてしきりに質流れの倉出し物と倉帳との帳合をやっていたが、そのうちにふと、
「うるさいな」
と、大旦那の盧俊儀が、舌打ちして、番頭のひとりへ言った。
「なんだい、外のあの騒ぎは?」
「子供ですよ。いやもう、さっきからたいへんなんで」
「ふうむ? 子供が何をやってるんだね」
「いいえ、風変りな占い者が、鈴を振り振り歌って来るのを真似て、ゾロゾロ尾いて歩いているんです。へい。……それ、聞えるじゃございませんか」
「なるほど。甘羅、子牙、顔回など、史上の人物を並べて、生意気なことをいってるらしいな。ひとつ呼び入れて、からかってやろうか」
「およしなさい旦那。