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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
唇の渇きや皮膚の血色も常ではない。呉用は目ざとく、すぐ訊ねた。
「宋先生。どこかお加減が悪いのではありませんか」
「いや、たいしたことはないでしょう。ただここ七日ほど微熱を覚えて、どうも食がすすみませんが」
「そりゃいかん。大熱にきまっている。眼底が赤い」
「眼が赤いのは、じつは今、午睡をとっていたからです。ああそれで思い出した。張順に起されたとき、私は夢を見ていたようだ……」
「どんな夢を?」
「死んだ晁蓋天王が、枕元に立って、ひどく心配そうな顔をしているのです。そして梁山泊の方を指さして、しきりに、帰れ帰れとでも言っているようでしたが」
「そこを呼び起されたわけですか」
「ええ。醒めてみると、ぐッしょり汗をかいていました。妙な夢をみるものですな」
「はアて。ただの夢とは思われん。総統、あなたは大事なお体なのだ。つまらん我慢はしないでください」
「いや、夢は、五臓の疲れ。おそらく、風邪でしょう。ご心配はいりません」
宋江はあくまで軽く言っていた。しかしその晩、降参の索超を加えて一酌汲もうと約していたのに、彼はその席へすら出ず、もうたいへんな苦しみ方だ。人々が驚いて体をみると、なんと、背なかの一部に、大きなはれものができていた。