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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「おウウい、舟の衆。渡船じゃねえのか」

「そうだよう。渡船じゃねえよーっ」

「いくらでも駄賃はハズむぜ。潯陽江まで渡してくんねえ。恩に着るよ」

「かねとなら相談にのッてもいいがね。うんと出すかい」

「出すとも、いうだけ出そうじゃねえか」

「よしきた! 乗りねえ」

苫をかぶせた漁船だった。船頭は二人いる。

案外な親切者で、張順の濡れた着物を火に焙ッてくれたり、寒いだろうといって、雑炊鍋の物を馳走してくれ、また自分の小夜着と木枕を出して、

「潯陽江じゃあ、だいぶ間がある。ま、客人、一ト寝み、横になってござらッしゃい」

と、すすめるなど、張順もつい、旅のつかれと、人の情けに温もられて、いつか波上の身をも忘れていた。

――ところが、目がさめてみたときは、もう遅い。体は荒縄でしばられていた。そして、船頭の一人は、自分の肌から抜き取ッた胴巻を口に咥え、手に薄刃のだんびらをひっさげていた。

「やっ? ち、畜生。おれに毒入りの雑炊を食わせやがったんだな」

「あたりめえよ」と、もうひとりの若い者は、張順の体を船ベリに抑えつけて「――縁もゆかりもねえ野郎に、なんで、得もねえ親切気など出すものかよ。