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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「では、林冲の処刑は、どう裁いたらいいと申すのか」
「とにかく、死刑はいけません。死罪だけは、断じていけない。といって、軽罪では、高家の父子もおさまりますまい。死一等を減じて、辺疆の地へ流刑にされてはいかがでしょう」
「さ。どうだろう、そんな処分では」
「大丈夫です。高家の側にも、手ぬかりがありました。副官陸謙の手紙が林家にあったのを、てまえが握っています。あれを陽なたに出せば、奸策歴然ですから、いかに高家たりとも文句は噫にも出せないはずと、てまえは固く信じまする」
末期宋朝の濁世にも、なおこの一良吏があったのである。即日、流刑と決まり、林冲は白洲で宣告をうけた。
当時の慣わし、半裸にして、二十ぺんの棒打ちを背に食らわせ、その顔に刺青する。また、護送となっては、鉄貼りの板の枷が首にはめられ、その錠前に封印がほどこされた。
流刑先は、滄州(河北省)の牢城だった。――牢城とはつまり諸州から集まる罪囚の大苦役場の名。
また、その聴許を要請された殿帥府の高家でも、司法法廷の裁判には抗いかねたものだろう。だまって、その公文書に裁可の官印を捺して下げてきた。
さて。