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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

もちろん、軍兵は望み次第に付けてやる」

「出発はいつでしょうか」

「ここ三日のうちとする」

「して、お荷物は」

「角な荷梱十箇。それには、大名府の役署に命じて、十輛の太平車を出させる。また軍兵のほか、軍部から力者十人を選ばせて、一輛一人ずつを配して付ける。……さらに車輛一台ごとに立てる黄旗の文字には――献賀蔡大臣生辰綱――と書く。まずもって、威風堂々と、山野の魔気を払うて行くがいいとおもう」

「どうも、せっかくですが」

「いやだと申すのか」

「なにとぞ、ほかの者に、お命じ給わりとう存じます。なんとなれば、去年は十万貫に値する高貴な品々を、ことごとく、途中賊難のため、掠奪されたと伺っておりますので」

「だからこそ今年は、なんじを見込んで命じたのではないか。それもだ……」

と、梁はいささか昂奮して、唇を乾かし、眼に赤い濁りを見せて、説得にこれ努めた。

「余は汝を愛しておる。故にだ、どうかして、そちを出世してやりたく思う。それがわからんか」

「かたじけなくは存じますが」

「煮えきらんやつだな。――蔡大臣宛ての献上目録にさしそえて、べつにわしの直書一封のうちに、そちの立身の途をも推薦しておく考えなのだ。