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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
どうじゃな。わしはつい食べ残しの弁当を解いてしまった。あんたも、どうせのことに、一ト涼みなさらんか」
「ままよ、きょうは雨に逢ったとしてしまえ。おうい、一同も休め、休んでよろしい」
これは少々楊志としてはまずかった。てれ隠しの気味がある。すでに兵どもは謝執事との狎れ合いで勝手休みをきめこんでいたのだから、楊志のムチもついに衆の結束と横着には、負けの恰好というしかなかった。
さらにまた、折も折だったといってよい。どこからか、田舎唄が聞えてきた。男の声である。ひょイ、ひょイ、ひょイ……と唄の節には、担い腰の足拍子が巧くのっていた。兵たちは皆、後ろの坂道を振り向いた。一人の男が、桶をかついで来るのが見える。……ぷうんと、焼酎の匂いが彼らの鼻をついた。
「おッと、待ちなよ」
つい出てしまった言葉である。
男は、荷を下ろした。
「へい、なにか御用ですかい」
「焼酎らしいなあ、そいつは」
「お察しどおりで」
「どこへ持っていくんだい」
「山向うの村へね、あさっては、そこの夏祭でさ」
「売れないのか」
「売り物なりゃこそ担いでいくんで。へい。値段によっちゃあ差上げますよ」
「いくらだ、一桶」