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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

その人は、均整のとれた体つきで、背も余り高くなく、年のころは三十がらみか。色は黒いが、眉目すずやかで、両の耳に珠をかけ、歩々の風にもおのずからな人品が見られ、どことなく、ゆかしい人柄だった。

「あっ、もしっ……」

何濤は、さっそく往来へ飛び出していって、こう頭を下げていた。

「押司。恐れ入りますが、ちょっと、そこの茶店までお顔をかしてくださいませんか」

「や……」押司は、いかにも不意を食ったような様子で――

「貴公は、どこの者か?」

「てまえは隣県済州の刑事頭で、何濤と申しますが、折りいってのおはなしは……お茶でも差し上げながらと存じまして」

何濤は、しいて彼を、茶店の内へ誘ってきた。そしてまず、挨拶の初めに訊ねた。

「失礼ですが、押司のご尊名は?」

「これはつい申しおくれた。私は姓を宋、名を江といって、近くの宋家村から日々この県役署に通勤しておる一押司です」

「えっ、じゃああの有名な、及時雨ノ宋江と世間でいわれているお人は、あなたさまで」

「はははは。そんな大それた者ではありません。まあお手をお上げなすってください」

「いやいや。どうぞ、上座のほうへ」

「とんでもない。