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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
それよりあなたこそ、遠来のお客だ。いったい、隣県の刑事頭が、いかなる御用で、これへご出張なされましたか」
「じつは、その……」と、何濤は刑事特有な鋭い眼をあたりに配ッて、声を低めた。
「ご配下の当県内に、ぜひ召捕らねばならぬ数名の犯人がおりますんで」
「ははあ。では、その手続きのために」
「さようです。――済州奉行所からの公文を持参いたしました。ひとつ、お計らい願いとう存じますが」
「承知しました。……しかし一応、どんな事件か、内容を伺ってみねば、この宋江の係か、ほかの者の係となるか、わかりませんが」
「すでにもう、世間の噂で、ご承知とはぞんじますが、例の黄泥岡の一件なので」
「あ。北京の大名府から、蔡大臣へ輸送した値十万貫の生辰綱(誕生祝いの金銀殊玉)が、途中、賊難に遭ったと聞き及んでいるが、その大事件に、なんぞ手がかりでもあったのですか」
「そうなんです。……従犯の白日鼠夫婦は、すぐ召捕りました。ところがなんと、ほかの正犯七人は、城県の者だと、自白におよんだのです。……で、昨夜、捕手の勢を揃えて手順にかかり、まずてまえがその先駆として、ご当所の諒解を得にまいったような次第。