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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
その間に、晁蓋が小声で、呉用の耳へささやいた。
「どうでしょう、この午餐会は」
「何事か、起らずにいまいな。……おそらくは林冲が、くち火を切るに違いない」
「そしたら、黙って見ていますか」
「やれば、やらせておく。もし王倫と林冲の二人の舌火が、あやふやな妥協にでも終りかけたら、この呉用が横ヤリを入れ、三寸不爛の舌さきで、二人の舌戦を煽り立てる。見てござらッしゃい」
「それやおもしろい」
晁蓋もいまはすっかりその気になった。そこで呉用は、他の面々へも、言いふくめた。
「……いよいよの土壇場いざとなったら、この呉用が、左の手で、こう髯をひねる。……と見たら、おのおのは一せいに、隠し持った短剣でな。……よろしいか、髯が合図でおざるぞ」
客舎を出ると、宋万が騎馬で迎えに来るのに会った。七台の山輿を舁いだ山寨の手下が、七名の客を乗せて、山ぞいを蜿り、峰道を越え、やがて南山の一亭へと運んで来た。
閣は水に臨み、欄は外洋の眺めまでを入れ、風光なんとも絶佳である。
主客の列は、左右に椅子を並べて分れた。捲き掲げた珠簾の下から、後亭の池園を見れば、蓮葉のゆらぎ、芙蓉の色香、ここも山寨の内かと怪しまれるほどである。