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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
やがて酒もめぐり、談笑にわき、午餐会もようやく酣と見えてきた。
しかし、誰の口からでも、ふと話題が、七名の仲間入りのことになると、王倫はすぐ話をほかへそらしてしまった。そのたびに、白々しい空虚ができる。そして、木に竹をついだような話が宋万や、杜選の口から、無理に出された。
午餐なので、杯盤はまもなく退げられ、甘い酒と、果盆が代って出た。いや、さらに美々しい一盆には、五箇の銀塊が乗っていた。
「――ところで、豪傑がたに、心ばかりなお餞別を仕りたいが」
王倫は、突如として、その銀塊の盆を、晁蓋のいる卓の方へさし向けた。
「思わざるご来訪、王倫、身にとってこんな欣しいことはござらん。しかし、ごらんの通りな波濤に囲まれた一山寨、いわば雨水の溜り桶を分けて暮らしているようなもの。龍宮住居というわけのものでもない。……で些少なれどこの銀子をお持ちあって、諸州を見くらべ、他の大きな寨に身を寄せ、おのおののご雄志を充分に、よそで伸ばしていただきたい」
晁蓋は、来たナと思ってか、くすんと微苦笑を、鼻で鳴らした。
「いやこれは、とんだご会釈です。一同浪々の身なので、どいつもこいつも寒々しくお目に見えたかもしれませんが、じつは小遣銭ならあり余っているのです。