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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「や。どうもお待たせいたしました」
と、連れ立って外へ出た。
客もまだない午まえの横丁の一酒館。まいど武松には顔馴染みの飲み屋らしい。あっさりした肴二、三品に、酒だけは、たっぷり取っておいてから、
「おい、お女将も丁稚も、今日は御用なしだ。呼ばねえうちは、お愛相なんぞを振り撒きに来るなよ」
武松はのッけから店中の者へ、こう断わったものである。
従って、初めからして変テコな対座となった。黙って酌し、黙って受け、九叔も話の継ぎ穂がないように、むっそり飲んでいるほかはない。
「どうも相すみませんね、都頭さん」
「なにがよ」
「手前の方こそ、一杯宅で差上げなくっちゃならねえところを、こんなご散財をかけちゃって」
「こっちの勝手だ。まあ飲みねえ、あるッたけは」
すでに語気からして妙に絡み調子である。しかし九叔の方では「ははん……」と帰結のおよそは読んでいた。それだけにまた、その腹を据えている態度が、逆に武松にとっては「こいつ一ト筋縄では泥を吐くまい」とする腹拵えを、いちばい強めさせていたものだった。
「……おっと、もうねえや。三角(一升二合)ほどのお銚子が、二人でペロと一滴なしだ。