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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「やっ、武松だな」
「おお西門慶。ふふふふ、ひどい驚き方じゃねえか」
「こ、こんなところへ、なにしに来やがった」
「さすが胸に覚えのあることあ隠せねえ。なんてえざまだ、その顔色は」
「か……帰れ。……は、はなしがあるなら、ほかで聞いてやる」
「いや、ここがいい、てめえの好きな肴を持って来てくれたんだ。それっ、この世の名残に会っておけ」
抱えていた包みの内から、潘金蓮の生首のもとどりをつかむやいな、西門慶の顔を目がけて抛り投げた。
「――あっ」
首は西門慶の沈めた肩を越えて、思わざる彼の相手客の横に落ちた。
しかし、その客はもうとッくに自失して腰が抜けていた。女たちはすでに一人もいない。武松は薄刃の短剣を抜いて、西門慶の前へ迫った。
「…………」
巨獣が闘いの全姿態を作るときのように、西門慶はジリジリと及び腰を上げかけている。金蓮の首を見ては、彼も今は、死か生かの、腹をすえたものに相違ない。
ガチャンと、すさまじい一音響とともに、彼の前にあった卓が、武松の方へ躍ッて仆れた。――彼の得意な足蹴の業で、卓上の器や酒や肉片は、まるで一抹の飛沫のように武松の姿をくるんで散った。