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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ちょっとした別嬪でしたぜ。たぶん今日の墓詣りでしょう。女は女轎に乗って、お供七人ほど連れ、提げ重二つに、お花を持たせて、街道を練って来ましたよ」
と、王矮虎のいる所へ知らせていた。色好みな矮虎は、きくや否、
「ほんとか」
眼いろを変えて、すぐ手下四、五十人を集めにかかった。そして宋江や燕順がそれを止めるのもきかばこそ、槍や刀をかつぎ出し、銅鑼、角笛の音脅しも物々しく、女狩りに出て行った。
「はて、どうしたろう? 耳にしては放ってもおけず、なにやら気がかり」
宋江は、夕方ぢかく、ふと、昼間小耳にはさんだ婦人のことを思い出した。
矮虎の手下にきいてみると、あれから女轎の供の兵隊七、八人を追っ払い、女の身は轎舁きぐるみ、矮虎が自分の住居へ連れ込んでしまったきりだという。
すぐ燕順の所へ行って、
「人妻にせよ娘にせよ、女隠しなどは罪深い。義で生きる好漢のすることではありませんな。どうもあなたの義兄弟らしくもない」
「いや、どうも」
燕順は、自分のことみたいに恥じた。
「――あいつも、事に当れば負けをとらない男ですが、たった一つ、そいつが彼れのやまいでしてね」
「どうです、ひとつ一しょに行って、ご忠告をしてみては」