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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「つづいては、白面郎の鄭天寿だ。――世間は知らず、ここへおいでなすッちゃ、てめえらのお上かぜも効き目はねえぞ」
「二つの檻車をおれたちへ献上して退きさがればよし、さもなくば」
「一匹でも生かして帰すことじゃあねえ。性をすえて返答しろい!」
聞くと、黄信は馬の鞍ツボに立って、怒髪を衝いた。
「よくぞ出て来た。泣く子もだまる鎮三山と異名のあるこの州軍総長の黄信を、うぬらはまだ知らねえな。……それッ陣を開け」
ところが、日頃の訓練も用をなさず、部下の兵は逆にわっと四散し出した。数知れぬ賊の手下が前後に見えたばかりでなく、伏勢は頭上にもいて、樹々の梢から雨とばかり毒矢を射浴びせてきたからだった。
「残念っ」
と叫びながら、林の小道で、黄信も馬の背から振り飛ばされていた。逃げる三彩の賊魁を追ッかけたのが因だった。“引伏セ”という茨や張縄の陥し穴に落ちたのである。すぐ狂い馬に取ッついて、再び馬上には返ったものの部下の一兵も早や辺りには見えない。
喊声は諸所に聞える。陽は早や暮れて、それが一そう不気味だった。のみならず得態の知れない火光が林を透して方々に見えたから、
「やっ。