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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ひょッと一味の者が、おまえを奪おうとするかもしれん。構えて、あんな仲間へは引き入れられるなよ。不忠不孝の子となってくれるなよ」
「はい、はい。そんな取り越し苦労はなさらないでください」
しかし宋江は、弟をかげに呼んで、その耳元へはこうあとを頼んでいた。
「なにしても、おとしよりだ。おまえはどうか朝晩、父のそばにいて、孝養してくれ。いいか。父をうっちゃらかして、江州へ会いに来ることなぞは無用だぞ」
かくて、郷を離れたのである。護送の端公(小役人)は李万と張千という二人の男。
端公たちは、三日後からもうびくびくものだった。梁山泊が近いからである。で、道も遠廻りしていたのだが、五日目のこと、ついに予想していたものが、一つの嶺で待ちかまえていた。
「あっ、劉唐ではないか」
嶺道をふさいでいた四、五十人の手下と、その先頭の赤髪鬼を見て、宋江がこう叫ぶと。
「おう先生、お迎えに来ましたぜ。――おいみんな、この二匹の端公を、ちょっくら叩っ殺してしまえ」
「いや待てっ。劉唐」
「先生、なんで止めなさる」
「その刀をかしてもらおう。君らの手をからずとも、わしから観念させてとどめを刺す」