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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「獄中の宋江と、戴宗とを併せて、同日同所で、斬刑に処せ。刑場の立て札には、ともに梁山泊に気脈を通じ、不逞な陰謀をいだいた大賊なりと公示するがいい」
与力の役人は、日頃、戴院長に好意をもち、世記にもなっていた下役なので、ただおろおろと、
「して、その……斬刑の日は、いつにいたしましょうか」
「きまっている。即日、あしたのうちに行え」
「ですが、あいにく、明日は国家の忌日で、なおあさっては、七月十五日の中元節、さらに天子の景命(誕生日)と、盆や祝日がつづきますので、地獄の大牢さえ、牢番から囚徒まで、休ませねばなりません」
「ちっ、ぜひもないわ。では今日より六日の後にしろ」
偶然とはいえ、これや天が宋江に、また戴宗に、幸いしたものといえようか。
六日後の牢城から江州郊外への刑場の道はたいへんな雑閙だった。聞きつたえた見物人がわんわんと黄塵の下に波打っている。
この朝、死刑囚二人は、かたのごとく、白い死衣を着し、油でない膠の水で、尖ンがり髪に結わせられ、赤い造花が、髪の根元に一本挿された。
また獄神の青面廟の前では、この世の名残に一碗の飯と酒が与えられ、それが終ると、裸馬の背で、沿道の眼にさらされながら、牛頭馬頭の獄卒が手綱持ちで、あまたな兵の警戒のもとに、死の刑場へ曳かれてゆく。