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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

まぎれなくそれは人の気配にちがいなく、

「星主さま。星主さま……」

と、二人の青衣の童子が左右から自分を呼んでいるのであった。

ぼかと、宋江はうつろな眸で、ふたりの童子の姿を見た。

天竺髷の頭、琅の耳環、鳳凰型の沓。

また、その青い綾衣には花鳥のもよう、薄むらさきの、長やかな風持つ紐。

「おっ? ……どなたでしょうか。おふたりは?」

「女神さまの使わし女です。宋星主さまを、お迎えにあがりました」

「星主? わたくしはそんな者ではありません」

「いいえ、おまちがいはございません。お越し下さればわかります」

「どちらへ」

「お待ちあそばしている女神さまのお座所まで」

清々しい微風がいつか宋江の身を乗せている。

月があって、その月が、まるで近くの物のようで、かつて見たこともない燿かしい真珠色をおびていた。

「おや?」

ここはその月の中なのではあるまいか。宋江は疑った。故郷宋家村の近くに、かかる所があったとは、生れてから老父のはなしにも聞いたことはない。

「星主さま。さあどうぞ」

銀柳、金花、楼を繞る翠靄の苑。

登れと誘うこの玉階は、いったい、たれの館なのか。

ふと、天上の仙館が思われた。