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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
だが、その袂は、とたんに物蔭にいた潘の爺さんにつかまれていた。
「あっ、待たっしゃれ。勘違いしないで、ま、もいちど中へ戻って――この一両日、ぜひなく店を閉めたわけを、とっくりと聞いておくんなされ。どうも石秀さん、あんたもまた、おそろしい短気じゃな」
わけを聞いてみれば、まったく石秀の思い過ごしで、むしろ石秀は赤面して頭を掻くのほかなかった。
「じゃあ、おじいさん。今日はご法事があるってわけでしたか。まさか、それでとは思わなかった」
「じつは、うちあけたおはなし。むすめの巧雲は、いちど押司の王さんにかたづいていましたのでな」
「うかがっています。そのことは」
「ちょうど今日が先夫の王さんの一周忌にあたりますのじゃ。そこで娘がたってご法要を営みたいと言いますのでな、報恩寺のお坊さまもお招き申してありますのさ」
「それじゃあ、肉屋を閉めたのは当然だ。店の者も見えず、肉切り包丁までかたづいていたんで、さてはもう、わたしから身を退いた方が世話なしかと考えましてね」
「めっそうもない。わしはこの年で、夜はカラ意気地がないし、聟どのは忙しい体、どうでもおまえさんに、法要の手伝いやらお接待のさしずなどもして貰わにゃならん」