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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「でも、こっちは見ず知らずだし、君は一介の食客、どうだろうな」
「いやいや、じつをいえば、主人李応とこの杜興の間は、深く将来の心契で結ばれているんです。古くからいる召抱えのてまえ、表面は用心棒の食客としておりますが、吉凶、どんな相談事でも、私だけには打明けてくださる仲。……ともあれ、李家荘までおいでください。ご思案はまたその上でも」
と、杜興は恩人楊雄と石秀をうながして、そこからわが住む主家の李家荘へ案内して行った。
「なるほど」
と楊雄も石秀も、ここへ来てみて驚嘆した。
山の根に拠って、広い濠をめぐらし、千松万柳、門への道は、吊り橋だった。正門の次に内門をひかえ、白壁高く、楼に楼を層ね、武器庫、厩長屋、およそ備わらざるはない。
さらに、李応その人も、噂にたがわぬ風貌の持ちぬしで、
「おはなしは、ただいま、杜興からよく聞きました。ほかならぬ杜興の恩人。杜興に代って、旧恩にお報いいたさずばなりますまい」
と、客殿にあらわれるやいな、まず言って、楊雄と石秀を安心させた。
そしてすぐ祐筆を呼び、
「本家へだぞ。ていねいに書け」
と、頼み事を口授して、一通をしたためさせた。