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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ま、そんなことを仰っしゃらずに」

「じゃ、せめて、一ト晩、厄介になるとしようか」

「いや幾日でも」

「そうはゆかない」

「ゆきませんか。残念ですな、どうも」

歓待の間々に、それとなく、仲間入りの水を向けてみるものの、雷横にはいッかとそんな気はないらしい。「おふくろの年が年なので、郷里は離れられない」

と、老母思いな方へ話は移ってしまう。――で、結局、中一日いただけで、翌々日には、

「また、縁があったら」

と、雷横はサッサと草鞋をはきだして別れを告げた。いまはぜひなく、三名は舟で金沙灘を送って行き、街道に出て、袂をわかつに際し、

「なんぞ、ご老母さまへの、おみやげにでも」

と、一嚢の金銀を彼に贈った。いやこんな物はと、断るのを、三名が強ってのことばに、ついに懐中におさめて去った。

あと見送って、三名は朱貴の店を覗き、

「そうだ、ここの店へは、もひとり楽和を手伝いによこそう。こんな間違いでよかったが、何か事件を起しては困る」

と、呟いた。

それにつづいて、三名の主脳は、金沙灘から帰る舟中で、新党員のふえたのを機とし、山寨の配備がえを協議した。東西南北、四つの見張り茶屋の一つには、ぜひ、※大虫おばさんに孫新を付けてやろうと、これもきまった。