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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

午後四時四十四分にのってかえるために、ウメをつれ三人で駅までゆっくり歩く。駅近くの海沿いの道が実にいい気持で、きのうの雪で白くなった箱根の山々の眺めもうつくしい。

伊豆のはなに軍艦がいる由。

大漁の赤旗を立てた小舟がいるというが自分には見えない、どれ、どれ? 見えない、と云っているところへ、むこうから来かかった東京者の四五人づれの中から一人の婦人が出て来て、あいさつする。佐藤夫人。これから行くところの由、大分ふけたところにルージュが浮き上って見えた。

夜寿来。台所に腰かけて話してかえる。自分切ない。どうしてこういう状態で「平気」だったり「馴れたり」出来るのかと。益※(二の字点、1-2-22)昨今はこういう暮しかたはよくない。

咲国、やっと開成山にともかく子供をやるということに一決した、この家の処分はきまらないでも、ということに。

〔欄外に〕

本日から各紙とも夕刊なくなった、「勝つために夕刊休止」

咲たち開成山にゆくのは大いによろしい。今のような右往左往的生活の浪費する精力は大したもので、太郎に悪影響しかない。どっちへ行っても特別めいて。

たった二晩田舎に眠り、夜の東京へ入り、殺気立っていることを痛感する、田舎へ行くべきではない。