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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

こころのうちの様々のよろこび、おどろき、一層新しくされた傾倒等の焔のかげが顔のニュアンスにさし加って来ていて、人間の味、女の味のこまやかな光彩が添えられている。こうして顔つきまで変る生活というもののいじらしさ。もと、一緒に過した一夜が明けると、鏡に映る自分の顔が別のもののようにあでやかに匂わしくなっているのに、どんなにおどろき、心をうたれ、そのように変る自分を、彼よりほかのひとに見られることを、はにかみふかく感じただろう、それを思い出す。今、人々の生活は遑しく、自分のことにとらわれているから、おそらく誰もわたしという女の顔が、こうしてかすかに変り、そのかすかな変りというものが、どんな深い意味をもっているかということを感じもしないだろう。

かかる現代において人生の本流に立っているということの、云うに云えない心持、落付き、信頼。川底のあらゆる起伏、岸辺の逆波みんなそのものとしてまざまざと見、且つ持ちつつ、しかし川は川下へ向って流れゆく。何年かかろうとも。揚子江では筏の上で生れた子が、歩くようになって河口に出る。

九月十六日(土曜)雨

村田親子をつれて国、国府津へゆく。